2014年4月22日火曜日

アウディS1 せっかく盛り上がっているBセグスポーツに投下された怪物

  アウディTTとプジョーRCZの「ドッグファイト」の行方はもうどうでもいい・・・と思っている人って結構多くないですか? 4mそこそこサイズのクルマに300ps近い直4ターボ載せて600万円!とか言われても99%以上の人の感想が「アホか!?」とまあ私のブログにたまに寄せられるコメントと同じような・・・ものじゃないですか? もし仮にそれだけクルマに使えるお金が余っていたとしても「ケイマン買うわ!」と言いたくなります。

  スタート地点はどちらも400万円以下でなかなか現実的だったのですけど、どこから道を踏み外してしまったのでしょうか?日本や欧州のセレブ引退世代のイメージする購入価格がもっと高い所にあるのが原因でしょうね・・・。400万円とか現役世代に必死で尻尾振ってみても所帯を持っている人には手が出ませんし、少なくとも数年以内の結婚を考えている人も検討しないですし・・・。引退世代にも「若者が買うような価格のものはいらん!」と却下され・・・気がついたら「おひとり様」専用車のイメージが付いてしまった感もあります。

  そこで販売テコ入れの為の「セレブ向け」仕様ということで、ゴルフやプジョー308と同程度の性能のスペシャリティー仕様を諦め、過給量を増やした専用エンジンをあれこれ作るわけです。これならゴルフよりも割高の価格に見合うスポーティさでモデルの存在意義を引き立たせて、同時に内装の仕様を変更して「高級車調」に仕立てて不満を減らす工夫も見られます。メーカーにとって利益の出る客に迎合するのはともかく、価格を合理的に上げるために、出力アップ競争が巻き起こったのは予期せぬ不幸です。TT-RSの360ps&1530kg!は元々のコンセプトが完全に破綻して機能不全に陥っている気が・・・。

  そんなどん詰まりの状況を打開すべく、そして失望させられてきた現役世代に再び興味を取り戻させるクルマをアウディが作りました。もしかしたら日本価格を見てまた失望するようかもしれませんけど、とりあえずこれはいいんじゃないですか? 2Lターボ&AWDなので実燃費はハイオクで10km/L程度でしょうが、これは何とか飲み込むとして、ポイントはゴルフやポロのGTIよりもさらに軽くて軽快になると予想できるスペック。まだ日本仕様の詳細が出ていませんが、ほぼ全てがターボ車になっている欧州メーカーからの輸入車に絶対的に必要なのは「ダイエット」です。

  車体剛性を上げる溶接技術はドイツメーカーが先行していますが、軽量化技術となると立場は逆転して、優秀な日本の鉄鋼メーカーと長年のパートナーシップを持つ日本メーカーが絶対的に有利です。特にトヨタがHV車の為に築き上げた軽量化技術は凄まじいものがあって、なぜプリウスが他のメーカーのHVよりも燃費がいいかというとそのボディの以上なまでの軽さに秘密があるわけです。そしてプリウスの成功が確定してプリウス用の鋼材を大きなロットで使うようになって、価格を十分に下げてから他の車種へも同じ鋼材を使ってHVを展開するようになったと言われています。

  そしていよいよVWもMQBによって製造コストを大幅に引き下げて、より高価な軽量化素材も使える余地が多くなったことで、誕生したのがこのアウディ「S1」。ゴルフもTTも新型になって軽量化を進めているようですが、やはりMQBの恩恵で日本車並みの高級材を使うようになったようです。まあこれまでの「メタボ傾向のパワーアップ合戦」から「軽量化による軽快度アップ合戦」へと切り替わってくることで、欧州車も再び魅力を折戻すのではないかなと期待しています。


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