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2013年8月30日金曜日

アルファ4C登場でケイマンの一人勝ちも終焉?

  2002年のRX-7、シルビア生産中止によって日本市場ではスポーツカーがトーンダウンし、NSXも生産中止に追い込まれた。以後発売されるスポーツカーはロードスターを除くと、北米や欧州をメインターゲットにした平坦なハイウェイ向けばかりになった。そんな日本市場に取り残されたスポーツカーユーザーの現実的な選択肢は2005年に発売されたボクスターとケイマンの2台のポルシェ車がその市場をさらった。2006年のMR-Sの生産終了によりトヨタのラインナップからスポーツカーが無くなり、国産はマツダがRX-8とロードスターを残すのみとなった。

  バブル以降、誰でもお手軽に輸入車に乗れる時代になったこともあり、日本のクルマ文化は完全に道を誤ってしまった。200万円台で素晴らしい国産ピュアスポーツが売られているのに、600万円以上するのに車重が有り過ぎる輸入車の「似非」スポーツカー(SLKやZ4)の方が売れてしまった。モノの価値の解らない戦後生まれの中高年が無様に闊歩する「暗黒時代」に至って若者はクルマから目を背けるようになってしまった。クルマ買う世代のほとんどが無恥で無知(バカ)なのだから、クルマを作る側も混迷を極めた。モリゾー社長も公言して止まない2000年代の「黒歴史」が形成された。

  そんな腐りきった時代でも決してブレずにクルマを作って来たのが、ポルシェでありスバルでありマツダだったが、当然ながら「バカ=ジェネレーション」の2000年代は3社とも苦境に喘いだ。この年代の日本市場でひと際存在感を示したのが、改革前のトヨタでありVWでありレクサスとドイツプレミアム3ブランドだった。汚い言葉で罵るなら、クルマの本質なんてどうでもいいからバカを焚き付けることだけに全力が尽くされた時代だった。

  これらのバカ=ジェネ派ブランドは一つの時代の終焉に当たって岐路に立たされている。トヨタとレクサスは社長以下「バカ=ジェネ」脱却宣言とともに新たな展開を見せつつある。BMWは長い長いトンネルの出口がまだ見えないようだ。メルセデスとVWは新たな虚構として「新バカ=ジェネ」を日本に根付かせようとしている。しかし日本人のユーザーは安易には近づかなくなった。そして新たにメルセデスやVWに立ちはだかっているのが、世界的ブランドへと脱皮しつつあるスバルとマツダだったりする。そしてそれに「バカ=ジェネ」での敗退組のポルシェ・ホンダ・アルファロメオが後に続く。

  2010年代になって、果たしてクルマ作りが有るべき姿に戻ったか?と言われればまだまだだと思う。しかし消費者の嗜好は目に見えて変わってきている。もはやベンツのマークの数字を代えてまで高級車アピールをすることに大して意味はなくなった。クルマで金持ちであることを必死で示そうとするのは貧乏人のやることだと思われている。大学生がバイトを頑張れば中古のドイツ車を所有することなど難しいことではない。だけどもそんなモノにお金を使う若者はほとんど居ない。街中で150万とか値札が付いているメルセデスやBMWを所有することは今日においては何の意味もないし、少なくとも東京や横浜ではナンパの道具にもならないのが現実だ。

  150万円あったら、ポルシェボクスターを買うという選択はあるかもしれない。いつでも壮快に夜の峠を登って夜景を見に行けるということは、私の価値観では人生を豊かにしてくれる要素だ。日本の山岳道路を自由自在に駆け抜けられるクルマ、つまり「峠スポーツ」「峠セダン」「峠ワゴン」「峠ホットハッチ」としての適正の高さこそが、日本で価値のあるクルマだと思う。国道246号線を走り厚木で東名に乗り、わずか2時間半で名古屋に付く。さらに1時間足らずで伊勢まで行ける。その先にある志摩半島パールラインを颯爽と駆け抜け、リアス式海岸沿いの峠道を幾つか超えて尾鷲や熊野へ至る。登坂車線を行く大型トラックを次々とかわしていく。海に近い3桁国道を進めば行き違いも困難な驚きの酷道だが抜群の景色だ。日本の津々浦々はこんな道路事情が待ち受けている。ただ信号がほとんど無いので、クルマさえ間違えなければ都内よりもずっと快適だ。

  ポルシェがどれほど日本人のことを考えてクルマを作ったのか知らないが、バブルの頃から支持されてきたスタンスを変えずに、日本に合ったスポーツカーを作り続けた結果が、今のボクスターやケイマンの人気へとつながった。RX-7やNSXといった好敵手を生んだ日本のクルマ文化こそがポルシェにとってはかなり相思相愛の関係なのかもしれない。

  ポルシェの独占的な市場を打破すべく日本にやってくる挑戦者がいる。やはり2000年代の負け組だったアルファロメオは周到な根回しをしつつ、日本市場に打倒ポルシェを掲げて乗り込んでくるようだ。ボクスターとケイマンをさらに軽量化して極端な設計へと落とし込んだようなアルファロメオの新型ライトウエイトスポーツ「4C」がいよいよ発売される。GT-RやフェアレディZに新型NSXと国産のスポーツカーが北米基準で高出力で重量化する中で、4Cはケイマンをベンチマークするとともに日本を視野に入れた設計になっている。日本で走りやすいクルマが欧州から続々やってくるのは違和感があるが、4Cのような極端な設計のクルマならばケイマン・ボクスターとともに歓迎すべき輸入車と言える。

  根回しというのは、大々的なマツダとのパートナーシップを指す。マツダのスポーツカーメーカーとしての世界的評価から考えると、対等な関係の協業が成立している。スポーツカーブランド同士のコラボはまだまだ例が少ないが、すでに作られるクルマのコンセプトも決まっているので懐疑的になる必要はない。ただしアルファロメオとしては日本と北米のスポーツカー市場でシェアを拡大するための「戦略的」意味合いが大きいと邪推してしまう。VWがバックに付いているポルシェに対抗するために、中堅のフィアットとマツダが協業はもちろん理解できるが・・・。(協業で作られるのはロードスター)


  欧州も日本も排ガス規制が年々厳しくなり、開発できるクルマのバリエーションもそれに従って狭くなっている。各社ともに似たようなクルマを作り、経営の都合で車種やプラットホームの数を極限まで減らしている。その中でRRという稀な設計のクルマを3車種も展開するポルシェはとても目立つ存在だ。そんなことが唯一続けられるのは、ポルシェが考えてきたコンセプトが2013年の今もなお十分に通用するからであり、スポーツカーというジャンルであれば他のクルマに対して有利ですらあるという証明だ。そのポルシェに真っ向から対抗する、突然変異のスポーツカー「4C」もきちんとその良さが周知されれば、必ずや日本のクルマ文化に良いものをもたらしてくれるのではないかと思う。

  なにをダラダラと言っているのかというと、メルセデスSLKやBMWZ4はトヨタ86よりも高価なスポーツカーとして認知されているが、それはスポーツカーの性能ではなく内装の質感やデザインで優位に立っているに過ぎないということだ。トヨタ86を純粋にスポーツカーの性能だけで凌駕し、2〜3倍高い価格でもユーザーに支持されているのがポルシェとアルファ4Cだ。SLKやZ4が人気ならレクサスSC(1740kg)みたいなクルマが生まれるだろうし、ケイマンや4Cが人気ならホンダS2000(1250kg)のようなピュアスポーツが復活を遂げるだろう。どちらが日本人にとって幸せかは誰の目にも明らかですよね?
  
  追伸  :  レクサスSCは8気筒だったので、SLKやZ4と同類に括るのはやや心苦しいです。最近MT化されたSLKはさりげなく大規模な軽量化を図っていて、新型アテンザ20Sくらい(1440kg)まで軽くしてきました。いよいよ峠車として使えるレベルになったようです。ただベーシックなSLK200はまだまだ重く、まさに4人乗車のアテンザで峠を下るような恐怖感があります。当然登りも重いです・・・。
 

 ↓2代目ケイマンはデザインが良くなりました。4Cもかなり個性的なスタイリングです。
どちらもデザイン以上にスポーツカーとしての性能に魅力があるというのが素晴らしいです。